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REPORT No.14

スタートアップが意外と知らない「PoCの真実」(第1話)

2020/07/30

PoC(Proof of Concept:概念実証)は事業の確度を高めるうえで非常に重要な手段だが、フィールドや協力企業が見つからず、有効なPoCが実現できずに困っているスタートアップが多い。
こうした課題を解決するため、我々は「スタートアップ」と「大企業・地域の中核企業」、「自治体」が共創するイノベーションプラットフォームを構築し、PoC型アクセラレータ・プログラム「MURCアクセラレータLEAPOVER」を開催している。
本連載では、我々が過去3期にわたり開催したPoC型アクセラレータを通じて知り得た、オープンイノベーションの成果を得るために必要なポイントを、関係者へのインタビューを通してお伝えする。
大企業との協業を望むスタートアップはもちろん、オープンイノベーションに取り組む大企業や自治体の方々にもご一読頂きたい。

PoC(Proof of Concept:概念実証)は事業の確度を高めるうえで非常に重要な手段だが、フィールドや協力企業が見つからず、有効なPoCが実現できずに困っているスタートアップが多い。
こうした課題を解決するため、我々は「スタートアップ」と「大企業・地域の中核企業」、「自治体」が共創するイノベーションプラットフォームを構築し、PoC型アクセラレータ・プログラム「MURCアクセラレータLEAPOVER」を開催している。

本連載では、我々が過去3期にわたり開催したPoC型アクセラレータを通じて知り得た、オープンイノベーションの成果を得るために必要なポイントを、関係者へのインタビューを通してお伝えする。

大企業との協業を望むスタートアップはもちろん、オープンイノベーションに取り組む大企業や自治体の方々にもご一読頂きたい。

ロボット工学スタートアップSE4×三菱電機×滝沢市

SE4はロボット遠隔操作技術開発のスタートアップだ。LEAP OVER第3期プログラム期間中、パートナー企業の三菱電機と協力自治体の滝沢市の協力を得て、ショベルカーの遠隔操作による除雪作業のPoCを実現した。
 

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Pavel Savkin氏(SE4 CTO & Co-founder)(中左)
山中 聡 氏 (三菱電機株式会社 デザイン研究所 未来イノベーションセンター グループマネージャー )(左)
峯藤 健司 氏(三菱電機株式会社 デザイン研究所 未来イノベーションセンター マネージャー)(右)

Interview:杉原美智子(三菱UFJリサーチ&コンサルティング LEAPOVER事業統括)(中右)

ポイント1 いつの間にか大企業の御用聞きをしていないか?~実はスタートアップの「WILL」が大事

【杉原】MURCアクセラレータの第2次選考は、1泊2日のBoot Camp方式で、スタートアップとパートナー企業・自治体の皆さんが泊まり込み、行いました。Boot Campの中でSE4さんが積極的に声を掛け、精力的に動き回る姿がとても強く印象に残っていますが、今回のPoC実現に至った経緯を改めて教えてもらえますか?

【サフキン】Bootcampでは、協力自治体やパートナー企業から実証フィールドやPoCの機会を得るためにマッチングしたいという強い意志を持って臨んでいました。我々が持っているフィールドは小さい砂場で、ラジコンのショベルカーを使うしかありませんでした。本物のショベルカーを使う場合、東京ではそれができる場所がありません。自治体にはショベルカー用の実証フィールドを提供してもらえないか相談し、一方、パートナー企業には、産業用ロボットアームを使ったPoCができないかと相談していました。

【杉原】そうでしたね。元々PoCの実機(ショベルカー)とフィールドで困って応募頂いたんですよね。パートナー企業としてご参画頂いた山中さん、峯藤さんにお聞きします。Boot Campの1日目の時点でSE4さんにかなり興味をお持ちだった印象ですが、彼らからの提案をどのように受け止められたのでしょうか?

【山中】まずは、Boot Camp冒頭のPitchで「宇宙産業革命」という彼らのビジョンを見て一気に心を奪われましたね。私たちはもともとは研究者なので、「尖ったこと」をやっているスタートアップに惹かれます。次に、彼らのスタンスです。他のスタートアップの多くは、パートナー企業のことをよく調べた上で、相手に合わせたPoCを提案していました。一方、SE4さんは純粋に自分たちのやりたいことをぶつけるだけぶつけて、後はパートナー企業にのるかそるかを決めて貰うというスタンスだったと思います。

【峯藤】三菱電機の事業領域に合わせた提案をするのではなく、SE4さんは自分たちのやりたいことを全面的に押し出してきました。これが良かったと思います。もちろん、我々はLEAP OVERを通じて自社利益の創出を目指していますが、それは必ずしも三菱電機に合わせた提案が良いとは限りません。我々が想像できなかった提案をしてもらうことで、新たな可能性を発掘することができるのです。Bootcampでマッチングしてからは、直ぐに三菱電機社内で産業メカトロニクス領域の新規事業を検討する担当者に話し、SE4さんと引き合わせ、ディスカッションをしました。その後、SE4さんが考えている仮説が正しいかどうかは実際の現場に行き確かめることが良いと判断し、実際に名古屋製作所に一緒に行って貰うことになりました。


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峯藤 健司 氏(三菱電機株式会社 デザイン研究所 未来イノベーションセンター マネージャー)

ポイント2 スピードが勝負。重要なのは「やらないコト」を決めること~プランBを用意しているか?

【杉原】まずは産業用ロボットアームのPoCに向けて名古屋工場に行ったんですね。SE4さんは実際の現場を見て、何を得たんでしょうか?

【サフキン】我々は現場を知りませんでした。現場を知れたことは今の事業にもしっかり生きていると感じています。実際の現場を訪問し、産業用ロボットアームはかなりの部分が自動化されているのを目の当たりにし、自分たちが付け入るスキがないと感じました。そこから学びを得て、未だ自動化がなされていない分野をターゲットにしようと決めました。Boot Campの時点で、パートナー自治体から雪かきに活用できないか?という提案を頂いており、三菱電機さんにもショベルカーで雪かきのPoCをしたいとお伝えしていましたので、ショベルカーを使った遠隔操作による半自動化のPoCに切り替える決断をしました。名古屋製作所の現場訪問を経て、アームの次のフェーズだと思っていたショベルカーの優先順位を上げた形になります。

【山中】実は、我々は名古屋製作所を訪問して以降も着々と産業用ロボットアームでPoCをする社内調整を進めていました。いよいよ社内の調整が済み、SE4にロボットアームを貸せるからやりませんか?という話をしたら、逆に断られてしまいました(笑)。ショベルカーのPoCを優先したい、と。なかなかあの状況で断れる人は少ないと思いますよ。でも、その意思決定が良かったと思っています。そのまま産業用ロボットアームで実証実験を行っていたとしたら、プログラム期間中には実現しなかったと思います。


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山中 聡 氏 (三菱電機株式会社 デザイン研究所 未来イノベーションセンター グループマネージャー )

ポイント3 成果に拘っているか?~成果は出しに行くもの、偶然出るものではない

【峯藤】元々、Boot Campの時点で協力自治体さんからショベルカーで雪かきをするPoCの提案が出ていましたので、我々はプランBとしてそちらの準備も進めていました。SE4の小型ショベルカーを保管する場所が無いというので我々が持つコネクションを使って、場所の確保も支援しました。成果は出しに行くから出るのであって偶然出る事なんて無いんですよ。汗かいた分だけ成果が出ると思います。

【サフキン】ショベルカーのPoCに方針転換してから、急ピッチで準備が進められました。PoCが実現できたのは、小型ショベルカーの実機が調達できたことや三菱電機さんがショベルカーの保管場所を紹介して下さったこと、元々提案頂いた自治体さんのフィールドが用意できない事になり、突如滝沢市さんにお願いして滝沢市さんがフィールドを提供してくれた結果ですが、振り返って考えると名古屋製作所で学んだプロセスがあったからこそ、迷いなくフォーカスできたと思います。


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Pavel Savkin氏(SE4 CTO & Co-founder)

【杉原】なるほど、パートナー企業・自治体の皆さんの協力があって、ロボットアームからショベルカーにピボットしたんですね。皆さんがプログラム期間の4か月内に成果を出すために、試行錯誤の末に事前準備を欠かさずスピード感を持って動かれた事が本当に伝わって来ます。

次回、第2話に続く。

PoC概要「重機の遠隔操作による除雪作業」

SE4が開発を進めているロボット遠隔操作技術を搭載したショベルカーを用いて遠隔操作による除雪作業を施行。
パートナー企業の三菱電機においてオープンイノベーション推進を担当する未来イノベーションセンター、協力自治体である滝沢市のコミュニティスペース「ビッグルーフ滝沢」に会場提供及び協力を頂き、実際の作業環境を想定した屋外の現場にて、実機を稼働させる初の試みを実現。
個人商店の駐車場等除雪車を使用することができないスペースは人により除雪作業が行われており、重労働。今回は除雪作業の自動化実現性と業務効率化等の効果について検証し、厳しい環境下での作業自動化のニーズについて確認。

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会社名 株式会社エスイーフォー
本社所在地 東京都台東区
代表者 代表取締役 Lochlainn Wilson
事業概要 時間や距離を超えて人とロボットが協働するシステム構築をすることをビジョンに 、ロボット遠隔操作の技術開発を行う
会社名 三菱電機株式会社
本社所在地 東京都千代田区
代表者 執行役社長 杉山 武史
事業概要 デザイン研究所 未来イノベーションセンターでは未来志向の研究開発や、スタートアップとのオープンイノベーションを推進する