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REPORT No.16

スタートアップが意外と知らない「PoCの真実」(第3話)

2020/08/17

PoC(Proof of Concept:概念実証)は事業の確度を高めるうえで非常に重要な手段だが、フィールドや協力企業が見つからず、有効なPoCが実現できずに困っているスタートアップが多い。
こうした課題を解決するため、我々は「スタートアップ」と「大企業・地域の中核企業」、「自治体」が共創するイノベーションプラットフォームを構築し、PoC型アクセラレータ・プログラム「MURCアクセラレータLEAPOVER」を開催している。
本連載では、我々が過去3期にわたり開催したPoC型アクセラレータを通じて知り得た、オープンイノベーションの成果を得るために必要なポイントを、関係者へのインタビューを通してお伝えする。
大企業との協業を望むスタートアップはもちろん、オープンイノベーションに取り組む大企業や自治体の方々にもご一読頂きたい。

PoC(Proof of Concept:概念実証)は事業の確度を高めるうえで非常に重要な手段だが、フィールドや協力企業が見つからず、有効なPoCが実現できずに困っているスタートアップが多い。
こうした課題を解決するため、我々は「スタートアップ」と「大企業・地域の中核企業」、「自治体」が共創するイノベーションプラットフォームを構築し、PoC型アクセラレータ・プログラム「MURCアクセラレータLEAPOVER」を開催している。

本連載では、我々が過去3期にわたり開催したPoC型アクセラレータを通じて知り得た、オープンイノベーションの成果を得るために必要なポイントを、関係者へのインタビューを通してお伝えする。

大企業との協業を望むスタートアップはもちろん、オープンイノベーションに取り組む大企業や自治体の方々にもご一読頂きたい。

第1話はこちらから

第2話はこちらから

ロボット工学スタートアップSE4×三菱電機×滝沢市

SE4はロボット遠隔操作技術開発のスタートアップだ。LEAP OVER第3期プログラム期間中、パートナー企業の三菱電機と協力自治体の滝沢市の協力を得て、ショベルカーの遠隔操作による除雪作業のPoCを実現した。
 

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Pavel Savkin氏(SE4 CTO & Co-founder)(中左)
山中 聡 氏 (三菱電機株式会社 デザイン研究所 未来イノベーションセンター グループマネージャー )(左)
峯藤 健司 氏(三菱電機株式会社 デザイン研究所 未来イノベーションセンター マネージャー)(右)

Interview:杉原美智子(三菱UFJリサーチ&コンサルティング LEAPOVER事業統括)(中右)

「共創」のあるべき姿とは~PoCを経て一段上のステージへ

【杉原】我々LEAP OVERはスタートアップ、大企業・地域の中核企業、自治体の3者が共創するイノベーションプラットフォームの構築を目指しています。今回のPoCはまさにそれを体現したケースだったと思っています。今回の経験を踏まえて、3者が共創するうえで重要なことは何だと感じていますか?私は個人的に、「共創」は美しい言葉ですが、win-win-winのような3者の強烈なインセンティブが無ければ実現しないと思っています。その観点で意識している点や工夫している点があれば教えてください。

【山中】まず、我々が汗をかきスタートアップ企業のPoCに伴走することで、SE4さんのような尖った技術を持っているスタートアップとの繋がりを構築できます。当社には約2,000人の研究者がいますが、社内技術の活用だけでなく、スタートアップの持つ社外技術も併せた幅広い技術ポートフォリオを構築することが、三菱電機としても大きな成果になると考えます。こうした関係構築自体がオープンイノベーションなのです。
関係構築を図るうえでそれぞれの役割を世界最高峰のレースF1(エフワン)に例えるならば、スタートアップはF1ドライバーで、大企業はピットクルーのような存在であると思います。ずっとは伴走できないけれど過去の経験からのアドバイスができ、なんとしてでも52周を走り切るためのサポートをする。それにより信頼関係が構築され長く続く関係が構築でき、後々のビジネスに繋がっていく。ビジネスとしてのリターンはもっと後の話であると理解しています。

【峯藤】我々はPoCそのものに成果を求めるよりもPoCに一緒に取り組むプロセスで将来一緒にやっていけるかどうかを見極められる方が重要だと思っています。そのため、プログラム期間中にPoCを実施すること自体を目的化していません。MURCアクセラレータLEAP OVERでは、PoCは将来的にお互い一緒に事業をやっていけるかどうかを確認するためのものとして位置づけられています。ですから、プログラム後も関係性を維持してくことが重要だと思います。杉原さんのおっしゃるWin-Win-Winの関係というのは最後の結果です。F1に例えるのならば、表彰式でのシャンパンファイトです。走っている最中に手を取り合うことはないですからね(笑)


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左 杉原(MURC) 右 山中氏(三菱電機)

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左から山中氏(三菱電機)、峯藤氏(三菱電機)、Savkin氏(SE4)

【山中】もう1つ大切なことは、私個人としてもSE4さんのような先端的な技術に関わられることが物事を前進させるための原動力になっているという事です。我々はもともと研究者なので研究者としてこの技術に関われる事にワクワクします。私個人として自分事として取り組める事だからやっていられる。8割が泥臭い作業の中で、2割が私個人でもbetしようと思えるものでなければ、8割の泥臭い作業をやろうと思えないんですよね。ですから、関わっていることにワクワクできるテーマであるという事は大事なことだと思います。

【サフキン】今回のPoCは三菱電機さんや滝沢市さんの協力があってこそ実現できたものです。その中で、「社会で必要とされる価値を提供する」という意識づけが大事だと考えるようになりました。我々がF1ドライバーとしてドライバーズシートに座ったからこそ、タイムアタックしつつも事故を起こしてはならない、ピットクルーに迷惑をかけられないという責任感が芽生えました。レースの中で三菱電機さんは1周のラップタイムのような短期的な成果を求めるのではなく、「まずは52周を走り切れ」というスタンスでした。それは我々の事業を成長させるうえで大事なアドバイスだったと思っています。我々はMURCアクセラレータLEAP OVERで皆さんとの関係を通して「社会に対する責任を果たす」という意識を強く持つことができました。これは今回プログラムに参加して得られた最大の成長だと思います。


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Pavel Savkin氏(SE4 CTO & Co-founder)

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左から山中氏(三菱電機)、Savkin氏(SE4)、峯藤氏(三菱電機)

スタートアップが意外と知らないPoCの真実 5つのポイント

全3話にわたり、株式会社SE4と三菱電機株式会社のインタビューを掲載してきました。

まず、SE4さんは自分たちのビジョンを三菱電機さんにぶつけ、三菱電機さんは彼らのビジョンに共感し、事業担当者につなげるなど何度もSE4さんとコミュニケーションを重ね、その熱意に応えてきました。

次に、MURCアクセラレータLEAP OVERでのPoCの実施に当たっては、契約書にのっとり実施内容に縛りを設ける形式ではなく、何をやって、何をやらないのかを検討することもPoCの一環として位置づけることが重要でした。

その中で、成果に拘り、あらゆる打ち手を考え準備をしておく、成果を出しに行く強い意識が重要でした。

こうしたプロセスの中で、臆することなく自分の考えを言い合える信頼関係も構築されていきます。

最後に、プログラム期間中に頑張れば手が届きそうなところにゴールを設定し、まずは1つやり切ることによって次のステップへとロードマップが描けるようになることが大事でした。

我々LEAP OVERプログラムにおける成果の1つは短期的にビジネスにつながることですが、将来の関係性を構築するための足掛かりになるということも成果です。その意識を関係者が共有することが重要です。

SE4さんが、自分たちのやりたいことだけではなく、社会で必要とされる価値を提供することも重要だと考えるに至った過程はとても印象的でした。こうした成長の機会を提供することが我々のプログラムの価値だと思っています。

今回は、オープンイノベーションの現場で見る「勘違い」について、当たり前のようでできていない5つのポイントをまとめてみました。スタートアップの皆様の参考になれば幸いです。


ポイント1 いつの間にか大企業の御用聞きをしていないか?~実はスタートアップの「WILL」が大事
ポイント2 スピードが勝負。重要なのは「やらないコト」を決めること~プランBを用意しているか?
ポイント3 成果に拘っているか?~成果は出しに行くもの、偶然出るのものではない
ポイント4 パートナーとして信頼しているか?~依存関係ではなく信頼関係を
ポイント5 とにかく1回やりきってみること~その一歩目を描けた事に意味がある

LEAP OVER事業統括 杉原美智子

PoC概要「重機の遠隔操作による除雪作業」

SE4が開発を進めているロボット遠隔操作技術を搭載したショベルカーを用いて遠隔操作による除雪作業を施行。
パートナー企業の三菱電機においてオープンイノベーション推進を担当する未来イノベーションセンター、協力自治体である滝沢市のコミュニティスペース「ビッグルーフ滝沢」に会場提供及び協力を頂き、実際の作業環境を想定した屋外の現場にて、実機を稼働させる初の試みを実現。
個人商店の駐車場等除雪車を使用することができないスペースは人により除雪作業が行われており、重労働。今回は除雪作業の自動化実現性と業務効率化等の効果について検証し、厳しい環境下での作業自動化のニーズについて確認。

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会社名 株式会社エスイーフォー
本社所在地 東京都台東区
代表者 代表取締役 Lochlainn Wilson
事業概要 時間や距離を超えて人とロボットが協働するシステム構築をすることをビジョンに 、ロボット遠隔操作の技術開発を行う
会社名 三菱電機株式会社
本社所在地 東京都千代田区
代表者 執行役社長 杉山 武史
事業概要 デザイン研究所 未来イノベーションセンターでは未来志向の研究開発や、スタートアップとのオープンイノベーションを推進する